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素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のこれおすすめです!

素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のこれおすすめです! Vol.8

Vol.8


タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~

©Touchi Me Not-Adina Pintilie

監督:アディナ・ピンティリエ

製作年:2018年 

製作国:ルーマニア、ドイツ、チェコ、ブルガリア、フランス

第68回ベルリン国際映画祭『金熊賞(最高賞)』

配給:ニコニコフィルム

2020年6月6日(土)から渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開

公式ホームページ:http://tmn-movie.com/

クラウドファンディングページ:https://motion-gallery.net/projects/TMN_Movie

年末年始には、まさか新型コロナウィルスがここまでの深刻な事態になるとは予想もしていなかったが、いま映画界も映画館が休館せざるを得ない大変な時期を迎えている。そして、この状況下でまず最初に被害を受けているのが地方のミニシアターであろう。地方のミニシアターは、これまで地元の映画文化を絶やさないために、自転車操業(失礼な言い方ですみません)でありながらも、なんとか経営を続けてきた所が多い。そのため、今回休館となると、もちろん収益はゼロになってしまう。もし再開できたとしても、閉鎖的な空間である劇場にお客さんが戻ってくるには時間がかかるだろう。そうなると、この荒波を乗り越えられずに廃業となってしまうミニシアターが出てくる可能性が高い。地方から映画文化の灯が消えてしまう、本当に危機的な状況と言えるのである。

そこで、いま、若手の映画監督や業界人たちが立ち上がり、自分たちを育ててくれたミニシアターを救うべく、「ミニシアター・エイド基金」というクラウドファンディング(インターネット上の資金募集)を始めた。1億円という巨額の支援金を集め、地方のミニシアターや運営団体に分散して寄付するプロジェクトだ。私は当初、1億円という巨額を集めるのはこの情勢では難しいのではないかと思っていたが、なんと開始たった3日で1億円に到達し、現在(4月28日)にいたっては、約18,000人から2億円にも及ぶ支援金が集まっているのである。

それだけミニシアターにお世話になった人達がいたということなのだろうが、暗いニュースが続く世の中に一筋の希望を与えてくれた出来事だ。ただ、もちろんこの支援金がミニシアターに寄付されたからといって油断はできない状況に変わりはない。これからはミニシアターも各自で対策をうっていくことが必須となるが、この一年で、これからの映画館のあり方を考えることになるのだろうと思う。

©Touchi Me Not-Adina Pintilie

そして、ミニシアターの次は映画配給会社にもその余波が来るだろう。興行での収益が見込めなくなった配給会社たちがこれから悲鳴を上げていくことになるが、実は私が代表を務めるニコニコフィルムも、弱小ながら映画配給をしている。しかも、6月6日(土)に『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』というルーマニアの新人女性監督の長編デビュー作の公開が待機しているのだ。もう絶望でしかない。5月に劇場が再開したとしても、足を運んでくれる方は少ないだろう。世界三大映画祭のひとつ、ベルリン国際映画祭で最高賞となる『金熊賞』を受賞した素晴らしい映画が台無しになってしまう最悪の状況だが、公開日を延ばすことはもうできない。

そこで、今回だけ通常の劇場公開に加え、同日に『仮設の映画館(オンライン配信)』を開始することにしたのである。これは、配給会社の東風さんが考えたインターネット上で新作映画が見えるという応急処置的な公開の形である。本来、配信は劇場公開から半年以上あとになってから始まるものだが、この劇場で映画を見ることが難しい状況ではそうも言っていられない。苦肉の策ではあるが、覚悟を決めてオンライン配信をすることに決め、いまはその準備を整えている段階だ。

しかし、そうすると、それこそ劇場の観客が減ってしまうではないか、と疑問に思われる方もいるかもしれない。その通りである。だから、この「仮設の映画館(オンライン配信)」で得た鑑賞料も、半分は各劇場に支払うという「ミニシアター・エイド基金」と同じ映画館救済プロジェクトの一つなのである。

「仮設の映画館」では、鑑賞者は普段通っているミニシアターや応援したい映画館をページから選択して、映画を鑑賞するという仕組みである。それは、ただ映画を見てもらうのではなく、あくまでも映画館という存在を意識した上で、楽しんでもらいたいという想いからきた劇場側への配慮だ。それが「仮設の映画館」という名前の所以である。

この新しい試みがどうなるのかは、まだ誰もわからない。不安の中での公開にはなるが、東風さんの配給する『精神0』と、私どもの『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』がこの「仮設の映画館」形式の先駆けとなり、様子をみることになる。前売り券も現状販売が中止になっているため、興味を持ってくれた方は、本作品のクラウドファンディングから「仮設の映画館」の鑑賞予約を申し込んでもらえればと思う。ミニシアターとアート系映画の文化を絶やさないためにも、どうかこの「仮設の映画館」に足をお運びいただきたいと願うばかりだ。