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映画監督・蔦哲一朗の素晴らしき映画の世界|

素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のこれおすすめです! Vol.11

Vol.11


映画紹介のコラムが新しいコンセプトでスタートします。

今回からこのコラムは心機一転し、私の新作映画の制作過程や公開についてを紹介するものに生まれ変わります!

皆さんが映画製作にどれくらい興味があるかは分からないが、映画ってこうして作られているんだなと思いながら楽しんでいただけると幸いである。徳島でのロケをメインに撮影準備を進めている新作もあるので、徳島の魅力を伝えつつ、前のように観てもらいたい新作映画があれば紹介してみたり、はたまた私の家族の話をしてみたりと、自由なスタイルでいきたいと思う。

鉱 ARAGANE

2021年春の私の現状としては、年内に公開を予定している「たまの映像詩集 渚のバイセコー」という映画がある。これは、吉本興業さんが2010年に立ち上げた“地域発信型映画”という地域おこしを目的とした映画製作の一環で撮らせてもらった映画だ。私のような若手監督が全国の地方を舞台に、これまでに100本近くの映画が作られ、その町を活かしたオリジナリティ溢れる作品が沢山生まれている。徳島県でもこれまでに鳴門市が舞台となった「アクガル」という映画が製作されているようだ。

私は今回、岡山県の玉野市を舞台に、渚さん(尼神インター)、ゆりやんレトリィバァさんや、ジミー大西さん、ネゴシックスさん、そして今をときめく空気階段のお二人など、贅沢にも多くの吉本興業所属のお笑い芸人さんが出演する映画を監督させてもらった。玉野市は瀬戸内海を挟んで徳島からも比較的アクセスがしやすい市ではあるが、テレビでCMが流れている玉野競輪以外は皆さんもこれといったイメージがないのではないだろうか。瀬戸大橋ができる前までは、本州の玄関口として、宇野港を利用されていた方は多いと思う。私の祖父・蔦文也も甲子園の行き来には、宇高国道フェリーを利用していた映像が残っているが、最近ではほとんど玉野市に足を踏み入れることはないだろう。

たまの映画詩集 渚のバイセコーより

結局のところ、映画も玉野市のシンボルである競輪をメインとした話にはなるのだが、競輪以外にも、実際に私が玉野市をシナリオハンティングして、感銘を受けた瀬戸内海の美しい景色や、直島や小豆島などのようなアートの町としての魅力も映画に盛り込んでいるので、若い世代にも興味を持ってもらえると嬉しい。公開時期は、コロナやオリンピック次第というのもあるが、年内に徳島でも観てもらえるように計画してもらっているので、また次のコラムでも続報をお伝えしたいと思う。

たまの映画詩集 渚のバイセコーより

そして、さらに次なる新作として、いま私が準備しているのが、徳島を舞台とした映画である。“カリコ牛”というものを題材に、明治から昭和にかけての農民の話を撮りたいと思っている。“カリコ牛”とは、徳島の農家が飼っている牛を、香川県の農家に貸してあげる風習である。当時の香川県では牛を育てるだけの餌が手に入れづらかったため、牛を持たない農家が多かった。しかし、田起こしや収穫の時期ともなると、牛の労力が必要になるので、山を越えた徳島県の農家に牛を借りくるのである。お返しに牛が香川県から戻ってくる際には、米俵が牛に積まれていたそうだ。ピーク時には年間8,000頭以上もの牛が、阿讃山脈を越えて行っていたそうだが、今ではあまり想像ができない光景だ。そもそも昔は多くの農家には牛小屋があり、牛と人の距離が近かった。牛を家族として大切にしていたのである。そんな風景も、耕運機の登場で昭和30~40年をさかいに消えていき、牛は家畜としてだけ人間社会に飲み込まれていったのである。そんな牛と人との歴史から、現在の資本・経済至上主義、人間至上主義、またエネルギー問題の抱える負の連鎖を断ち切るものを何か描けるのではないかと思い、この“カリコ牛”を映画にしようと決めたのだ。

 

いまは、まずメインロケ地となる私の地元・三好市での撮影するための準備を進め、同時にシナリオを推敲している段階だ。撮影はワクチンが普及され終わった頃を見計らって行いたいと思うが、田植えの時期を撮影したいと思っているので、来年春だろうか。まぁ、こればかりはコロナ次第なので、焦らず、今できることを少しずつでも準備していきたいと思う。この“カリコ牛”の映画はこれから2年間かけて製作し、完成後にはカンヌやヴェネチア、ベルリンなどの有名映画祭での受賞を目指すつもりだ。その一部始終をこのコラムで赤裸々に語っていくつもりなので、次回も楽しみにしてもらいたい。

牛について学ぶため、飼育体験をしている写真