映画作成の途中経過を報告します。

今年になってから、何か忘れているなぁというモヤモヤがずっとあったのですが、夏前に思い出しました。2023年は祖父・蔦文也の生誕100周年でした。生きていたら8月28日で100歳。これは祖父の恩恵で存在している私としては何かやらないわけにはいかない！と、地元三好市で私が以前制作した祖父のドキュメンタリー映画「蔦監督―高校野球を変えた男の真実―」の野外上映会を急遽企画し、屋台の並ぶイケダ夜市とコラボして9月10日に開催しました。

そして、このコラムでずっと紹介させてもらっている私の新作長編映画「黒の牛」は、撮影後の編集やサウンドデザインといったポスプロの段階になりました。「黒の牛」はフィルムで撮影した映画ではありますが、昨今の流れとしては、ネガフィルムを一度スキャニングという作業でデジタル化し、それをパソコン等の編集ソフトで切り貼りして繋いでいきます。最終段階ではまたそのデジタルで編集した画に合わせて、ネガフィルムを切り貼りするという行程になりますが、今回は予算的にまだフィルムプリントする費用を集めきれていないので、デジタルのままの完成になってしまう可能性もあります。フィルム派の私としては、どうにかフィルム映写ができるように資金集めも引き続き、頑張りたいとは思いますが、フィルム映画での制作がどんどんと難しくなっていくのを日々感じております。

また、編集については基本的に私が自身のバソコンでコツコツとやっておりますが、今回は規模も大きい映画ということであり、私だけの独断ではなく、多くの方にアドバイスをもらいながら進めております。西島秀俊さん主演映画「CUT」などで著名なイランのアミール・ナデリ監督も事務所の編集室にお越しになって、何度も通して私の編集を観てくださり、細かい所まで指導をしてくれました。また、ほぼ同時進行で、サウンドデザインの作業を台湾で進めており、一週間ほど台湾に渡って、本作のサウンドイメージを伝えて、効果音や環境音入れを一緒に作業をしてまいりました。

そして最後は、昨年撮影した新作短編映画「ミカはヴィーナス」についてですが、9月15日から東京の下北沢にあるシモキタ-エキマエ-シネマ『K2』というミニシアターで公開決定しました！モデル・グラビアアイドルの奥村美香さんの日常をドキュメンタリー調に撮影した映画になります。自然ばかり撮っている私としては異色の作品ですが、実は今回、“日本映画批評家大賞”という昔「祖谷物語」の際に、私に新人監督賞をくださったところからの依頼で制作したという経緯があります。そことライブ配信サイトの“マシェバラ”が企画し、投げ銭やオーディションによって選ばれたのが奥村美香さんというわけです。私は完全にあと乗っかりな企画ではありますが、奥村さんの野心といいますか、色々な経験を積みながらも純粋に売れたいという願望に感心し、私の下手な即席ドラマを撮るよりかは、奥村さん自身を撮影した方が面白いと思い出来上がったのが「ミカはヴィーナス」です。もちろん、今回もフィルムは諦めずに16mmのカラーフィルムでの撮影を敢行しております。

あの志村けんさんとの噂が週刊誌に取り上げられた奥村さんは、そのことで誹謗中傷もあり、一時はかなり精神的にも病んでいたそうですが、自分を見失うことなく再び芸能界での活動を続けている姿に、皆さんも何かを感じていただけるはずです。また、今回奥村さんの友情出演として、YouTuberとしてご活躍のラファエルさんや加藤紗里さんも参加してくれておりますし、あのTVチャンピオンの司会でおなじみでした中村ゆうじさんも特別出演してくれておりますので、パワフルな皆さんの迫真の演技にもご注目ください。

また、今回「ミカはヴィーナス」が２５分の短編ということもあり、私の他の短編映画「ワークショップ」と「新宿ステーション界隈の亡霊たち」も併映しての『蔦 哲一朗短編特集』として公開することになりました！この２本はどちらも、私が演技ワークショップの講師をさせてもらった際に参加してくれた俳優の皆さんと作った映画です。「ワークショップ」は201７年の撮影になりますが、高みを目指す俳優の方々の赤裸々な想いを、現実と虚構を織り交ぜて描いた16mmカラーフィルム作品です。その後、世間のワークショップ界隈では講師たちが立場を利用したセクハラ等の問題が取り上げられましたが、その状況を早くに感じ取って作品にしているとも言えます。また、「新宿ステーション界隈の亡霊たち」は今年の春に撮影した出来立てホカホカの作品ですが、こちらの作風はガラッと変わり、フィルムも８mmのネガフィルムに人生初めて挑戦したコマ撮り映画です。昨今だとライムラプスと言われる手法ですが、長時間同じ場所でカメラを回して、早送りしたような映像になることで、背景の通行人たちは流れるように動き、メインの俳優さんだけ時が止まったかのように見えることで、何かに執着する亡霊を表現した実験映画になります。まぁ、私の特集に誰が興味があるのか不安は募りますが、ぜひこのコラムをご覧になられた皆様も劇場に足を運んでいただけると幸いです。

『ミカはヴィーナス』（2023|25分|ビスタサイズ|ステレオ|日本）

出演：奥村美香、佐藤愛、中堀聖　友情出演：中村ゆうじ、ラファエル、加藤紗里

監督：蔦哲一朗　企画：一般社団法人日本映画批評家大賞機構、マシェバラ

プロデューサー：貝田直佑起、撮影：西 佐織、渡邊拓海、竹野智彦、録音：佐々井 宏太、照明：稲

葉俊充、製作：清武千園、一般社団法人ニコニコフィルム

【introduction】

日本映画批評家大賞とマシェバラ（ライブ配信および視聴を行えるストリーミングサービス）がコラ

ボした映画製作企画で、オーディションを勝ち抜いた奥村美香を主演に迎えた短編映画。華やかであ

る反面、厳しさもある芸能界に身を置く、奥村美香というひとりの女性の心の裡を16ミリフィルムがとらえる。「TVチャンピオン」などでお馴染みの中村ゆうじ、YouTuberのラファエル、タレントの

加藤紗里らが友情出演。

『ワークショップ』（2017|30分|ビスタサイズ|ステレオ|日本）

監督：蔦哲一朗

出演：守屋 惠美、岩見 美映、志村 宗一郎、橋本 致里、堀 正幸、木下 卓也、薮田 真衣 、菜美、野

本 蓉子、泪乃 あゆみ、新田 佑梨、高橋 由佳 、赤間 太一、中村 佑、吉田 萬、大河原 恵、山下 一世、

紀那 きりこ、岡本 拓朗、小野 寛幸、内山 由香莉、工藤 智也 、赤染 萌 、大谷 博史、山口 祐理子、

長尾 卓磨、Romi

脚本：久保寺 晃一、上田 真之、蔦 哲一朗、撮影監督：青木 穣、録音：佐々井 宏太、制作：辻 秋之

監督補：上田 真之、助監督：南馬越 耕太郎

【introduction】

2017 年 10 月に東京で開かれた演技ワークショップの受講生 27 名をキャストに、講師の蔦監督が

制作した短編映画。なぜ、彼ら彼女らは俳優を目指すのか。演出家からのセクハラ、受講生同士の恋

愛、自分のクズっぷり、知名度がない俳優への世間の風当たりなど、受講生が今まで感じてきたもの

を赤裸々に語りつつ、それでもなぜ自分は俳優になりたいのかを自問自答する、現実と虚構が入り混

じった異色の群像劇。

『新宿ステーション界隈の亡霊たち』（2023|4分|スタンダードサイズ|ステレオ|日本）

出演：GON、赤間 太一、東 龍之介、田村 魁成、久保 圭一、島津 志織、藤野 晴彦、鈴木 睦海、朝

陽菜のどか、佐藤 桃子、山下ケイジ、田中 孝治、高野 雄貴、横井 典子、定森 安南

監督/編集：蔦 哲一朗、撮影：竹野 智彦、監督補：久保寺 晃一、上田 真之、整音：佐々井 宏太

【introduction】

8㎜フィルムを使用した蔦作品初の実験映画

9/１５よりシモキタ-エキマエ-シネマ『K2』にて公開！

蔦 哲一朗短編特集　予告編

https://youtu.be/Fm-6knz-n-4?si=nUQlmjCZAi8btZ7A