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素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のこれおすすめです!

徳島県出身の映画監督・蔦哲一朗おすすめの作品たち Vol.2

 

 こんにちは。徳島県出身の映画監督、蔦哲一朗です。さて、2回目となるこの映画コラムですが、編集部の方から「蔦さんもお父さんになられたことですし、今回は父親目線で家族をテーマにした作品を選ばれては?」と提案されたので、「なるほど、これはいま話題の『万引き家族』を書いてほしいのかな?」と、勝手に忖度することにした。後日わかったことですが、編集部の方はそんなつもりは全くなかったらしい(笑)。

 というのは、何を隠そう私は今年の2月、羽生結弦くんが平昌オリンピックで2個目の金メダルを獲得したまさにその日に娘が産まれ、いまは育児の真っ最中。恥ずかしながらすでに溺愛しまくりである。戦争映画などで兵士がペンダントの中にある子供の写真を握りしめながら眺める心境に、ようやく共感でき始めた今日この頃なのだ。そんなタイミングに父親目線で映画を選ぶというのは、確かに私自身も興味深い。

 

まずは『万引き家族』について・・・

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

INTRODUCTION

『三度目の殺人(2017年)』が数々の賞で称えられた是枝裕和監督の長編14作目となる待望の新作『万引き家族』。様々な“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督が、この10年間考え続けてきたことを全部込めたと語る渾身作。

東京の下町にで質素に暮らす、一見どこにでもいそうな平凡で貧しいありふれた家族。しかし、彼らは生計を立てるため、家族ぐるみで軽犯罪を重ねていたのだったー。犯罪でしかつながれなかった家族の “許されない絆”が、ある事件をきっかけに衝撃の展開を迎える。人と人との関係が希薄な今の時代に、真の “つながり”とは何かを問う、心揺さぶる衝撃の感動作が誕生した!

息子と協力して万引きを重ねる父・治をリリー・フランキー、その妻・信代を安藤サクラ、彼女の妹・亜紀を松岡茉優、家族の“定収入”として年金を当てにされる祖母・初枝を樹木希林が演じる。さらに、池松壮亮、高良健吾、池脇千鶴、柄本明、緒方直人、森口瑤子ら実力派俳優たちが集結。そしてオーディションで抜擢された城桧吏(じょう・かいり)と佐々木みゆの2人の子役が瑞々しい表情を見せている。

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

STORY

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく―――。

蔦哲一朗が語る『万引き家族』とは・・・

 

 そんな父親目線で、今回『万引き家族』について語るわけだが、あえて私から特に何か賛辞を送る必要もないくらい、世間が大注目の映画である。カンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞というものの反響が、映画業界以外でもまだこんなにもあるのかと少し驚いたが、このニュースは作り手としてもモチベーションの上がる大変嬉しいものである。だが、私がこの映画で注視したことは、世間が騒いでいる出演者の演技の素晴らしさや、家族の本質を問うといった映画らしいテーマではない。そもそも家族ネタに関心が薄い私は、映画で描かれる「同情的な不幸話」には心を動かされない。それはたぶん自分が比較的円満な家庭で、親からの愛情にも恵まれ、何不自由なく育ったためだと思われるが、だからこそ映画のために作られた不幸な登場人物には、どうしても感情移入ができない。

 もちろん映画である以上、現実の写し鏡となる社会問題を背負ったその大事な役がいないと映画は成立しないため、そんな元も子もない不平を言ってもしょうがないのだが、私としては作り手の作為が見えすぎる映画があまり好きではないということである。残念ながら『万引き家族』もその映画的文法の呪縛から脱しているわけではない。まぁ、是枝監督としては、本作でそこから脱しようとするつもりもなく、描くべきことをやりきっただけのことであると思うが、はたしてこれは是枝監督が本当に目指した映画表現なのだろうか、との疑問は残る。賞狙いと商業的な要素を考慮して作られた、とてもバランスの良い作品というのが私の印象だ。これは批判ではない。そもそも私のような人間が、是枝監督の作品を批判などできるわけがない。ただ、私自身の期待が大き過ぎたのと、大好きな是枝監督の過去作『歩いても 歩いても(2008年)』と比べると、どうしても大衆的な作品で、問題提起の問題部分が伝わりやすい映画だという私の感想を述べたまでである。

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 では、そんな偉そうな私が普段は映画のどこを楽しみに観ているのかだが、基本はやはり撮影になる。もっと言うと「映画的な撮影」があるかないかである。少しだけ砕けた言い方をするならば、画力(えぢから)があるかどうかだ。映画的な撮影とは、別に何か基準があるわけではない。例えるなら、ゾゾっと鳥肌が立つような感覚に訴えるものがあるのかどうか、といった曖昧なものである。他に例えるなら、絵画を観た時の感動に近いのかもしれない。その画から伝わる作者のやさしい眼差しや高揚感、情懐などの心の豊かさや、この私たちが生きる世界をその構図力ですべて表してしまったかのような奥深さを肌で感じる時、私は幸福で満たされた気持ちになるのである。映画において、それは決して役者の演技や表情だけから来るものではない。時には何気ない山の風景の撮影が、またある時には2人が乗ったバイクが街の中を駆け抜けるだけの景色の撮影が、センスと匠の技によって、人々の心に突き刺さるのだ。これを撮れるかどうかが本当の意味での映画の才能だとは思う。しかし、私も含め日本ではどうしても真面目な左脳タイプの作り手が多く、物語をゴールに向かわせようと伏線を回収することに躍起になり、映画本来の“映像表現の豊かさ”を忘れがちなのである。

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 と、また不満ばかりを書いても誰も得をしないので、『万引き家族』の話に戻すことにする。はたして、私の偏屈な視点からこの映画を観た場合はどうなるだろう。是枝監督は、演出の上手さから撮影の評価を見落とされがちだが、実はとても撮影にもこだわった監督なのである。前作『三度目の殺人』では、それまで愛用していたフィルム撮影をやめ、初めてデジタルでの撮影を採用したのだが、その時の“画の質”が気に食わなかったのか、「もうデジタルでは撮らない」と明言し、本作ではフィルムに戻ったと噂で聞く。しかも最近は作品ごとにカメラマンが変わるほどの浮気ぶりであるが、それは是枝監督の中で自分のスタイルに合った撮影手法を今も模索中なのだと推測する。今回は、近藤龍人さんという若手の有望カメラマンと映画で初めてタッグを挑んだわけだが、、、。うむ、私好みのカットは少なかったように思う。もちろん近藤さんの撮影は私も大好きなのだが、今回は無難な印象だ。それはやはり出演者の演技を第一に考えた結果なのだろう。ただし、犯罪でつながった家族が暮らす家の縁側で、全員が打ち上げ花火を見るシーンは私も好きである。

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 是枝監督は、これまでにも家族がテーマの映画で幾度か花火のシーンを巧みに描いてきたが、ついに、今回は花火の光を見せずに、どこからともなく聞こえるあの切ない音のみで見事に描き切っている。こうなると、家族の見ている花火を観客は自分で想像するしかないのだ。観客の想像力次第では、どこまでも大きな花火を描くこともできるし、逆に寂しい花火にもなる。是枝監督は、映像表現の持つ無限の可能性と観客を信じこのようにしたのではないだろうか。また、この偽りの家族たちの将来は、そんな刹那的な花火のようにゆっくりと消えていくということを暗示しているのだろう。この家族に限ったことではないが、家族を定義できる確かなものなんて存在しない。もしかしたら、花火の残像のように脳裏に残る思い出だけが、家族を家族として繋ぎ留めているに過ぎないのかもしれない。そう思うと、私にとって娘と過ごす時間こそが何より大切なのだと思えてくる。家族の定義とは全くもって難しい問題なのだが、少なからず娘に万引きをさせないで済むくらいにパパを全うしたいものだ。


 
 今回の映画評は、父親目線とは関係のないものとなってしまったが、やはり人間そんなすぐには変われるものではない。私の中の父親としての目線は、もう少し時間をかけてゆっくり養っていこうと思う。 『蔦 哲一朗』
 

『万引き家族』作品データ

 

日本アカデミー賞最優秀作品賞他全6冠受賞『三度目の殺人』の是枝裕和監督最新作!
家族を描き続けてきた名匠が、“家族を超えた絆”を描く衝撃の感動作

 

第71回カンヌ国際映画祭最高賞 パルム・ドール受賞

『万引き家族』公式サイトへ

(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.


 

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

★監督★

是枝裕和

 

★CAST★

リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林

 

★STAFF★

【撮影監督】近藤龍人 【脚本】是枝裕和

 

配給 ギャガ/日本/2017

蔦哲一朗プロフィール

【プロフィール】

蔦哲一朗(つたてついちろう)
映画監督・1984年生まれ・徳島県出身


 祖父は、かつて甲子園で一世を風靡した徳島県立池田高校野球部の元監督・蔦文也。

 上京して映画を学び、13年に地元、徳島の祖谷(いや)地方を舞台にした映画「祖谷物語ーおくのひとー」を発表。東京国際映画祭をはじめ、ノルウェー・トロムソ国際映画祭で日本人初となるグランプリを受賞するなど、多くの映画祭に出品され話題となる。
 14年、個人として徳島県より阿波文化創造賞を受賞。16年、祖父・蔦文也のドキュメンタリー映画「蔦監督ー高校野球を変えた男の真実―」、徳島県の林業推進短編映画「林こずえの業」を発表。現在、新作長編映画準備中。

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