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素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のこれおすすめです!

徳島県出身の映画監督・蔦哲一朗おすすめの作品たち Vol.4

 映画の製作から40周年を記念し、4Kデジタル修復版で甦った名作『ディア・ハンター』を先日有楽町でみた。何度見ても色褪せない素晴らしい映画だ。昨今は『七人の侍』や『八甲田山』、『2001年宇宙の旅』など映画史に残る名作が4Kデジタル・リマスターで復活し、劇場公開されることが多い。過去の名作は基本的にフィルムで存在しているため、現在のフィルム映写機がない映画館では上映することができないが、フィルムの修復技術とデジタル再現技術が進歩したおかげもあり、4Kのデジタル映画として新しく生まれ変わった名作が劇場で観られることになってきたのだ。高田馬場にある早稲田松竹という名画座でアルバイトをしていた私としては、ぜひ皆さんには劇場で過去の名作に触れ、真の感動に出会ってもらいたい。徳島県が力を入れている4K徳島映画祭でもこういった4Kデジタルリマスター作品が観られる機会が増えると嬉しい。

『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』

 しかし、古い映画というものに抵抗がある方もいるようだ。最近テレビを見ていて私が世間とのギャップを感じたのは、名作を観た若者の感想が、「昔の映画もいまの映画に劣らないくらい面白い」と言っていたのを聞いた時だ。私の常識としては、映画は昔の方が面白いという長年の映画鑑賞から築き上げられた無意識な固定概念があったが、普段映画をあまり観ないであろうその若者は、今の映画の方が面白いと思い込んでいたようだ。

 もちろん、映画はCGなど技術面で進化してSF作品など表現の幅は広がった。だが、人間や世界の本質を今の映画の方が昔より描けているかと言われれば、そんなことは決してない。もちろん今も昔も駄作は沢山あるが、100年以上の映画史の中で生き残ってきたほんの一握りの名作たちには、現代人にも通じる不変の感動が存在し、いつの時代でも観客を驚かせる。むしろ今の映画作りは過去の二番煎じと言っても過言ではない。脚本の話になると結局は、過去の名作を例に出すのが常である。要は面白い基準が映画黄金期の50年以上も前から停滞しているのである。昔の作品をアップグレードするかのように、見てくれだけを変えながらなんとか生き延びてきた映画という芸術は、大本のところでは何も変わっていないというのが私の考えだ。

 そういうことを踏まえると、私は新作ばかりを劇場で観る必要はないように思う。名画座がない地方の劇場でもいつでも名作が上映されている環境があるのが望ましいはずだ。ただ、そればかりは集客次第ではあるので、まずは皆さんが劇場で名作を観るような流れが世間にできないことには劇場も生活がかかっているのでどうしようもない。

そんな私の願いを込めて、紹介する今回の『ディア・ハンター』は全国のシネコンでも上映されるようなので、お近くの劇場で上映があればぜひ観てもらいたい。しかし、残念ながらまだ徳島での上映は決まっていないようだ。
 

「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」
全国公開中
配給:KADOKAWA

 『ディア・ハンター』は、ベトナム戦争の傷跡がまだ色濃く残る70年代にアメリカで撮られたベトナム戦争時の話である。ストーリーは割愛させていただくが、ロバート・デ・ニーロ演じるマイケルなど兵役される主要キャストが、ロシア系アメリカ人役であるのも、今思えば偶然ではない。ベトナム戦争といえば、資本・自由主義国家のアメリカ率いる南ベトナム軍と、当時のソ連など共産・社会主義が裏で糸を引いていた北ベトナム軍との争いである。そんなロシアの血を引く若者たちがアメリカ軍に兵役され、ベトナムの地で捕虜となってロシアンルーレット遊びで苦しめられるのは、皮肉なものである。そのトラウマからマイケルたちは退役しても心の傷は癒えず、故郷に帰ってきてもどこか生きた心地がしない。兵役前によく行っていた山でのシカ狩りも、神に見放されたように上手くいかないのである。

 しかし、そんなマイケルの苦悩とは裏腹に背景にそびえ立つ雄大な山々は、息を呑むほどの美しさであり、それが更にマイケルの虚無感を助長するのである。

「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」
全国公開中
配給:KADOKAWA

「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」
全国公開中
配給:KADOKAWA

 設定ではペンシルバニア州とあるが、実際の撮影地はどこなのだろうか。こんな素晴らしい山々がアメリカにもあるということに私は一番驚かされる。徳島の剣山や祖谷の山々に重なるその風景を観ながら、自分も戦場から帰ってきたら、あのマイケルのような気持ちで故郷の山を見ないといけなくなるのかと思うと、胸が強く締めつけられるのである。この気持ちが映画の中だけで留まることを切に願うが、アメリカはこのような素晴らしい映画を作ったにも関わらず、未だに戦地に若者を送っている。映画の力とは一体なんなのだろうか。

「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」
全国公開中
配給:KADOKAWA

 最後に、今回『ディア・ハンター』ということで、シカ繋がりで紹介させていただきたいのは、私がプロデュースしている徳島県で駆除されたシカを革製品にしたプロジェクト『DIYA(ディヤ)』である。全国的に畑や原生林を荒らすシカやイノシシなど害獣が問題となっているが、徳島の山間部も例外ではない。私の地元・三好市でも年間2,700頭、徳島県内においては12,000頭ものシカが駆除されているのである。私はその実態を自分の映画『祖谷物語-おくのひと-』でも描いたが、映画だけで終わらせず、シカの供養と解決の道を探るためのキッカケとして始めたのが、このDIYAプロジェクトである。始めてからもう3年目になるが、お陰様で徐々に広がり、今年の2月2日~15日には東京の吉祥寺パルコで展示会をすることにもなった。今後も少しでも多くの駆除シカを活用できるように販路を広げていくつもりだ。

 そして、いつかはこのDIYAプロジェクトを題材に、徳島の自然の中で『ディア・ハンター』のような壮大な映画を作りたいと思う。


「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」

全国公開中
配給:KADOKAWA

【ストーリー】

60年代末、ペンシルべニア州の製鋼所で働くマイケル、ニック、スティーヴンの3人が徴兵される。

彼らの壮行会を兼ねたスティーヴンの結婚式が開かれた翌日、親友同士の男5人は鹿狩りを楽しむ。

やがて、戦地ベトナムで再会を果たすも捕虜となった3人は、仲間相手に命がけのゲームを強いられる。


「ディア・ハンター 4Kデジタル修復版」

全国公開中
配給:KADOKAWA

作品情報

ディア・ハンター 4Kデジタル修復版

<出演>

ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、ジョン・サヴェージ、メリル・ストリープ

 

監督:マイケル・チミノ 

脚本:デリック・ウォッシュバーン 原案:マイケル・チミノ、デリック・ウォッシュバーン、ルイス・ガーフィンクル、クイン・K・レデカー 

撮影:ヴィルモス・ジグモンド

音楽:スタンリー・マイヤーズ

 

1978年/アメリカ/184分/カラー/スコープサイズ/PG-12

© 1978 STUDIOCANAL FILMS LTD.  All Rights Reserved.

 

配給:KADOKAWA 

公式HP:http://cinemakadokawa.jp/deerhunter/


『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』

12/14(金)、角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺(※)ほか全国公開

※「アップリンク吉祥寺」 2018年12月14日(金)オープン

『ディア・ハンター 4Kデジタル修復版』公開決定ニュース.pdf


DIYAプロジェクト

DIYAとは-----

鹿=Deer(ディア)+祖谷(いや)=IYA

 

DIYA(ディヤ)は、里山の現実をより多くの人に伝えていくことを目指し、立ち上げた鹿革ブランドです。
徳島県の祖谷(いや)地方で、やむなく駆除された野生の鹿を革製品にして世界中の人々に届けます。

 

≫「DIYA」について詳しくはこちら


プロフィール

蔦哲一朗(つたてついちろう)
映画監督・1984年生まれ・徳島県出身


 祖父は、かつて甲子園で一世を風靡した徳島県立池田高校野球部の元監督・蔦文也。

 上京して映画を学び、13年に地元、徳島の祖谷(いや)地方を舞台にした映画「祖谷物語ーおくのひとー」を発表。東京国際映画祭をはじめ、ノルウェー・トロムソ国際映画祭で日本人初となるグランプリを受賞するなど、多くの映画祭に出品され話題となる。
 14年、個人として徳島県より阿波文化創造賞を受賞。16年、祖父・蔦文也のドキュメンタリー映画「蔦監督ー高校野球を変えた男の真実―」、徳島県の林業推進短編映画「林こずえの業」を発表。現在、新作長編映画準備中。

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