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映画監督・蔦哲一朗の素晴らしき映画の世界|

素晴らしき映画の世界|映画監督・蔦哲一朗のここだけの話! Vol.13

Vol.13


映画作成の途中経過を報告します。

次女・詩子(うたこ)のお風呂と長女・陽子(はるこ)の七五三の様子

前回のコラムを書き終えてから間もなく、8月末に次女の詩子(うたこ)が家族に加わり、再び夜泣きの大変さを痛感している今日此頃だが、長女の陽子(はるこ)の自我も強くなってきたようで、七五三で着る振袖も自分で選び、徳島と高知のジジババ達に見てもらえて大満足だったようだ。コロナが落ち着いてきたことで、地元へは帰りやすくなったが、オミクロン株の出現で海外との出入りがまた厳しくなってしまったのは残念である。私もその影響が全くないわけではなく、来年製作予定の「カリコ牛」を題材にした映画のために、日本にはない規格の70mmフィルムでテスト撮影をし、特別枠の手荷物検査(未現像のフィルムであるためX線を通せないので空輸はできない)でアメリカに持っていく手はずだったのが、今回のオミクロン株でそのプランが駄目になってしまった。日本にはない規格で映画を作るということの壁に突如ぶち当たったわけだが、まぁ、これくらいで日本初となる長編70mmフィルム映画への野望は消えない。むしろ意地でもこの無謀な挑戦を実現させてみせるという謎の闘争心に火がつき、70mmフィルムへの期待が更に高まっているのである。

世界的にも珍しい、70mm(左)、35mm(中央)、16mm(右)フィルムカメラが一堂に会した画

その「カリコ牛」の映画は、紆余曲折がありながらも準備は着々と進み、現在は美術担当である部谷京子さんデザインのもと、地元の大工さん達と一緒にメインロケ地となる黒沢湿原に茅葺屋根の家を建設中である。私の映画でこのようなセットを建てることは初めてなので、完成が大変楽しみで仕方がない。牛がいた頃の民家には牛小屋が当然のようにあったわけだが、今回のこのセットは、母屋の外にある牛小屋ではなく、家の中に牛や馬が寝る厩(まや)があるタイプの家になる。そうすることで、より人と牛が家族のような存在だったことも表現できると思っている。

地元の大工・大西始さん(左)と美術担当の部谷京子さん(右)

建設の様子

それと、前回のコラムで田植えの様子を紹介した稲作については、その後どうなったかというと、草取りもせず、肥料も全く入れなかったので、稲の実り具合は控えめに言っても最悪であった。しかもその上、鹿さん達の襲撃に会い、ほとんどの稲穂は食べられてしまったのである。でも、せっかくなので最後までやり切ろうと思い、わずかに残った稲を刈って、天日干しをし、厳重にロープも張ったのだったが、それも鹿さんたちにとっては最高の食事場になってしまい、無料のドライブスルーのような感じで、すべて食べられてしまった。まぁ、今回は来年の撮影のための練習と稲の実り具合の参考として稲作を経験してみたかったというのが主旨だしな、と自分を納得させてはいるのだが、やはり本音では自分で植えたお米を食べてみたかった。ただ、こちらも70mmフィルム同様、映画の内容にほとんど関係ないところで謎の火がつき、来年こそは意地でも自分で作ったお米を食べてやると意気込んでいるのである。

ロケ地の稲刈り

天日干しの様子

このあと鹿に食べられることも知らず、満面の笑み

また、11月には毎年審査員として参加させてもらっている4K・VR徳島映画祭が、今年は初めて神山町とは別に、私の出身である三好市との2拠点で開催され、実家から徒歩30秒の場所にある真鍋屋・MINDE(ミンデ)が映画祭の会場となった。そこで私の人生初となる特集上映も企画していただけることとなり、私の「祖谷物語」などの過去作や、今年劇場で公開中の新作である「たまの映像詩集 渚のバイセコー」も含む計7作品が上映されたのである。上映の合間には、私のトークショーも交えて、映画の解説や普段私が考えていることを色々と話させてもらった。

予てから映画祭を地元でやりたいと思っていた私としては、今回のこの4K・VR徳島映画祭が三好市で開催されたことは大変感慨深いものがある。ただ、この人口が減り続けている田舎で映画祭をやる目的は何なのか、改めて考えさせられたような気がする。全国には色々な映画祭があるが、どこも動員には苦労されていることだろう。みんなが知っているような俳優さんを呼んで舞台挨拶込みの上映が動員の結果には繋がるだろうが、自分がそういう映画祭をやりたいのかはわからない。しかし、自費で映画祭をやる以外は、動員についてはやはり結果を求められることになると思うので、世界の素晴らしいけどマイナーな作品だけで映画祭を継続していくのは本当に至難の業である。地元での映画祭のあり方については、これからも試行錯誤が続くわけだが、町おこしと同じで、人口が少ないことを逆手に、自然を活かしたオリジナルなものを見つけていくしかないのかなと思っている。

三好会場となった真鍋屋とそっくりな似顔絵

トークショーの様子